都内某所で貿易商社を営む社長から直々のご相談。
職業柄、自ら海外へ行く機会が多く、1年の半分近くは海外で生活を送っており、国内の業務については、10年近く共に勤務している、信頼のおける部下に任せていたとのこと。
そして、相談者が年明けからしばらく日本で生活を送っていたある日、東京地方裁判所から特別送達郵便が届いた。
そこには、契約している倉庫会社から損害賠償請求の訴訟を起こされていると示されていた。
内容をよく見ると倉庫の賃料未払い分の請求である。
慌てて、会社に行き書類関係を調べてみると、今まで契約していた倉庫会社はすでに解約され、新たな倉庫会社と契約していたことも発覚した。
上記事項が決定した内容の株主総会議事録には、身に覚えのない自分の代表印が押印されている。
また、株主総会議事録及び契約書に記載されている日付部分の筆跡が改竄(かいざん)されている疑いが。
10年以上、会計をやっている部下を信用して、代表者印など預けていたのがいけないのだが、既に部下は円満退職してしまっている。
もしかすると倉庫会社とグルになっている可能性もゼロではない。
この日付の改竄により、倉庫内の商品も仮処分のため動かすことができず、賃料など含めて多額の損害が発生するかどうかが決まるため、なんとしても偽造文書であるという証拠が欲しい。
大学時代からの友人で弁護士をしているA氏に相談してみたが、株主総会議事録や契約書に代表印が押されていることから、この書類は正式なものとなり、状況はかなり厳しいのではとの見解とのこと。
このまま泣き寝入りするのも、気が納まらないため、戦略を立てることにした。
そこで原告には何とか和解で決着することにし、円満退職した元社員に対しては訴訟を起こし、横領・背任罪で刑事事件として進める方針となり、まずは、株主総会議事録や契約書の偽造を立証することとなった。
まず、契約書や株主総会議事録に押印してある、代表印や会社の実印は、印影鑑定により、本物と合致した。
これは、信頼していた部下が、自由に使用できる状況だったため、勝手に押印したに違いない。
しかし、筆跡鑑定により、署名欄、日付は、元から記載されていた文字に後から加筆し、改竄していることが判明した。
このことから、契約前の時点での株主総会の日付は、代表者は海外出張で国外にいたため、出席していないことになり、当然、契約書類に記入はできない。
偽造文書の事実を記載した筆跡鑑定書を元に交渉した結果、倉庫会社からの損害賠償請求事件については、和解案でなんとか調整する方向とのこと。
また、辞めた社員に対しては、横領・背任罪で刑事告訴を含め準備を進めている。
【参考情報】
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