都内某所の閑静な住宅街で起こった「ご近所トラブル事件」である。
相談者は、妻と結婚してから約14年の歳月が経ち、2人の間には子宝には恵まれなかったが、自宅も購入し、お互いに趣味を持ち、経済的にもゆとりのある生活を送っていた日常であった。
が、ある日突然、相談者の自宅とその近隣宅へ、相談者の妻を誹謗中傷する内容のビラが投函されるという事件が発生した。
内容は、相談者の妻の容姿に関することからはじまり、異性から好意を抱かれているなど、妬みの内容が主である。
差出人は、ご近所か、親しい関係者の仕業なのか、全く見当がつかず、文面から見ても何が目的であるのかがまったく不明であった。
妻に聞いても、心当たりはないとのことであり、この誹謗中傷文が書かれたビラの投函は、正に寝耳に水であったとのこと。
そして、1ヶ月が経過し、日常に戻りかけていたころ、またしても同様の誹謗中傷文が投函される事件が発生した。
前回と同様に自宅と近所のポストに郵送ではなく、直接投函されたものである。
しかし、相談者はビラを見てある疑念を抱くようになったのである。
それは、文字の特徴が妻の筆跡に似た箇所があり、「そして」や「そもそも」や「御座います」などの文言は、妻の文体に被るところがあり、また、妻はこの事件に関してはいたって冷静であったからである。
当初は、近所の住人の嫌がらせかと考えていたが、ここに住んでからは良好なご近所付き合いをしてきており、ご近所から恨まれるようなことは何ひとつしていない。
しかし、妻が自らそんなことをする理由は見当たらないものの、妻への疑いも払拭できず、疑心暗鬼になる毎日を過ごしていたため、知人の勧められて専門家に筆跡鑑定を依頼することを決断した。
今回、差出人の特定はもちろん、妻の筆跡でないことを確認したいとのことで、妻には内緒でのご依頼となった。
対照資料としてご提供いただいた妻直筆のメモ紙数点と、鑑定資料の誹謗中傷文のビラに書かれた文字郡を筆跡鑑定した。
誹謗中傷が列記された筆跡は、韜晦文字(とうかい文字)ではあったものの、被害者であるはずの相談者の妻の筆跡と合致するという判定となり、相談者の悪い予感が的中した結果となった。
※韜晦(とうかい)文字とは
個人が特定されないよう、普段、自分が書く文字の癖が出ないように書かれた文字
後日談であるが、この結果をもとに、相談者は妻へ問いただしたとのこと。
すると、妻は、最近、自分のことを構ってくれない、女として見てくれなくなった夫の気を引くために、自作自演で誹謗中傷文を作成したことを認めたそう。
ただ、妻の精神状態も不安定なため、現在は心療内科へ通院しているという。
相談者は、今後、妻とも良く話合い、きちんとコミュニケーションを取るように努力すると述べていた。
【参考情報】
怪文書、嫌がらせ、誹謗中傷の被害対策/犯人を特定する!
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