某一流企業の総務部に所属勤務するサラリーマンからの相談。
事件はさかのぼること3ヵ月前のある日、相談者の勤務する会社の部署宛に、相談者の部下とその同僚女性のことを誹謗中傷する差出人不明の手紙が届いた。
社内の就業規則では、社内恋愛の禁止は特にうたっていないものの、送られてきた怪文書には、企業秩序や風紀を乱す行為の禁止規則に違反していると書かれている。
相談者の部下と同僚女性は、社内ではまじめに仕事をしており、両名が交際している事実はほとんど他の社員には知られていないほどであった。
部下から相談を受けた直属の上司である今回の相談者は、2人が来春には結婚をする予定との報告を事前に受けており、両名が交際していることは前々から知っていて温かく見守っていた。
そして、誰かの悪戯かもしれないので、いったん手紙は預かっておくことでしばらく様子を見ることとなった。
しかし、最初の手紙が送られてきてから1ヵ月後、またも同様の怪文書が部署宛に送られ、更には取引先へも送られていたことが判明した。
書かれている内容は、両名が交際していること以外は事実とは異なり、会社のコンプライアンスを問われる内容であったり、この問題に対応しない会社の姿勢に関する悪評や、信用不安説を流布する内容にまで発展している。
会社としては、さすがに看過することはできない問題と判断し、これ以上、この怪文書による問題がエスカレートする前に、犯人を突き止め、事件の早期解決をはかるため、筆跡鑑定および指紋鑑定を依頼をすることとなった。
今回送られてきた2通の手紙は、定型形郵便封筒で、怪文書はA4普通用紙で5枚ある。
書面はワープロソフトによる印刷物であるため、筆跡鑑定は不可能であったものの、封筒の宛名書きは直筆となっていた。
そのため、今回の筆跡鑑定資料は封筒の宛名文字である。
内容については、相談者の部下と同僚女性が交際していることを非難する内容であり、部署名や取引先を知っていることから会社内の人物である可能性が高く、さらにある一定の条件を満たす人物に絞り込むことができた。
このことから、犯人と思しき数名の社員の筆跡を秘匿採取し、筆跡鑑定を行うと、同社内で相談者達とは別の課に勤務する同僚の筆跡であることが判明した。
当初、被疑者である同僚は犯行を否認していた。
そのため、さらに指紋鑑定を行ったところ、怪文書と同僚の触った書類から共通指紋の検出に成功、怪文書の犯人がこの同僚であると特定された。
指紋鑑定の事実を踏まえ、犯行を否認していた同僚を事情を聴取した結果、犯行を自供したことをもって、自主退職扱いで解雇することとなった。
【参考情報】
怪文書、嫌がらせ、誹謗中傷の被害対策/犯人を特定する!
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